新シーズンを目前に控え、移籍市場も動きが活発化してきた6月のある日、例年通りブリストルユナイテッドの首脳陣の間でも、補強の会議が持たれた。
昨シーズンの補強会議は、改革を目指した僕のせいで大荒れだったが、その結果、2シーズンでプレミア昇格を成し遂げることができた。
3年目となる新シーズン、スカウトのトミルグラードは当然補強ポイントとして話し合われるであろう、FW陣の新戦力についてすでに調査済みだった。
来季のスポンサーの話や選手の契約の話がひと通り終わると、彼はドヤ顔で僕に選手のリストを見せてきた。
「今回の補強のポイントであるFW陣の選手について、私なりに調査した結果、この2選手は獲得できる可能性が高いです。」
「一人目はカルー・ウチェ。ナイジェリア代表の選手です。30手前で即戦力となる、知名度も非常に高い選手です。エムボカニ、コールと共に、攻撃陣を引っ張ってくれる存在になるでしょう。」
「…。」
「もう一人はアルテム・クラヴェツ。ディナモキエフに所属する22歳です。彼は各世代の代表に選出され、2年前からはフル代表にも選出されています。ウクライナ代表のエースに育つ可能性を秘めた将来性豊かな選手です。」
(…、選手は悪くない。悪くないが、何だろう、このモヤモヤ感。)
「いかがです?監督。なんならまた2人とも獲っちゃいましょうか?ハハハ!」
なんだこいつは…、これで自分の仕事は終わったと思ってるんだろうか…。まず何よりなんだこのドヤ顔は…。確かに選手は悪くない。ただどうしてもこのやってやったぞって顔してる、目の前のスカウトが気に食わない…。
「分かりました。他のポジションの選手はどうですか?」
「…、は?」
「いや、だから他の選手…。リストを早く出してください。」
「…、いや、ちょっと…、あ、ありません…。((((;゚Д゚)))))))」
「…、え?」
「い、いや、確か今回の補強はFWだとジェルピンスキさんからも聞いてましたし…。ち、中盤や最終ラインも昨年の補強が結果に結びついてますから、今回補強の必要はないものかと…。((((;゚Д゚)))))))」
「ぐっ…、ばっ…」
「ばかもーーーん!」
僕が大声をあげる前に、部屋に響いたのは会長の怒号だった。
「ばかたれが!FWの選手しかピックアップしてないとはどういうことだ!今の戦力がプレミアで通用すると思ってるのか!今シーズンは全ての対戦相手が格上だぞ!いつまでも昇格に浮かれてないで、もう一度全てのポジションの選手を洗いなおしてこーい!!」
「ひっ、ひーぃ!すいませんー!!」
…。
選手の補強の前に、スタッフの補強の方が先かもしれない…。
僕は本気でそう思った…。